文明開化とともに西洋の化粧がもたらされるまで、日本には独自の化粧がありました。とくに庶民の生活が豊かになった江戸時代には化粧が庶民の間にも広まり、大きく発展をとげました。
当時の化粧で使う色はわずか3色のみ――女性たちは白粉の”白”、眉墨やお歯黒の”黒”、そして口紅の”赤”を駆使して、日本人特有の黒い髪や瞳に映える化粧を求めました。
その一方で、化粧は単に顔を美しく見せるだけではなく、女性としてのたしなみであり、また社会的な身分をあらわすものでもありました。当時は階級や未婚・既婚、子の有無などによって化粧法にいくつかの決まりがあったのです。
本展覧会は化粧関連資料の一大コレクションであるポーラ・コレクションより、江戸時代の女性たちが用いた化粧品や道具、文献史料を展示し、当時おこなわれた化粧をご紹介いたします。
江戸時代ならではの美意識や工夫とともに、「美しくありたい」という願いが現代のわたしたちとまったく変わらないことも感じていただけることでしょう。