截金(きりかね)は薄く打ち延ばされた金箔を、竹の刀で様々な線や形に切り、それを貼り付けて文様を作る、極めて繊細で優美な日本の伝統工芸です。飛鳥時代に大陸より伝えられて以来、永い伝統を持ち、仏画、仏像の彩色上にほどこされて、平安時代後期、藤原の貴族文化の中で最盛期を迎えます。この時代の名品は卓抜な彩色法とよく調和し、目を奪うような装飾効果をあらわしています。
この素晴らしい技を近代の芸術として甦らせた、東西の両巨匠が齋田梅亭と西出大三です。
齋田梅亭(1901-1981)は江戸時代より続く、西本願寺専属の截金仏画師の家に生まれ、京都市立美術工芸学校で図案を学びました。その清新なデザインと、素地となる木の特性を生かした珠玉の作品を発表して、近代工芸としての截金を高い品格を持った芸術として甦らせました。
西出大三(1913-1995)は、現在の石川県加賀市に生まれ、東京美術学校で彫刻を学びました。自作の木彫に岩絵具で彩色し、金・銀・プラチナ箔で截金をほどこした作品を制作。力強い木彫と華麗な彩色、優美な截金が三位一体となった芸術性豊かな世界を開拓しました。
本展では京阪神、金沢、東京など各地に散在する名品約120点を一堂に集め展示いたします。優雅にして華麗なる截金の世界をお楽しみください。