日本美術の世界に燦然と輝く傑作の数々は、時代を代表する絵師や仏師、陶工らが師匠や先達の作品に学び、時にはライバルとして競い合う中で生み出されてきました。直接の影響関係がない場合でも、優れた芸術家達の作品を比較すると、興味深い対照の妙を見出すことが出来ます。きらめく才能の拮抗により、各時代の造形芸術はより豊潤に、華麗に開花してきたといえるでしょう。
本展では、このような作家同士の関係性に着目し、中世から近代までの日本美術史に名を刻む巨匠たちを2人ずつ組み合わせ、名品を「対決」させる形で紹介します。対となるのは、中世の水墨画を代表する雪舟等楊と彼に続いた雪村周継、安土桃山時代に天下人の御用を激しく争った狩野永徳と長谷川等伯、琳派芸術の原点となった俵屋宗達と、それをさらに発展させた尾形光琳、江戸中期に現れた鬼才の双璧、伊藤若冲と曽我蕭白、最後の文人画家と呼ばれる富岡鉄斎と近代画壇の重鎮となる横山大観ら12組。国宝10余件、重要文化財約40件を含む計100余件の名品が一堂に会します。巨匠2人の作品の「対決」を前に、互いにどのようなかんけいにあったのか、実際に見て比較することが出来るのが本展の最大の魅力です。
本展は日本東洋美術研究誌『國華』の創刊120周年を記念して開催するものです。「対決」という斬新かつ簡潔な視点から日本美術史を見渡すことで、『國華』の研究成果の一端を広く紹介できるよう願っています。