本展覧会は、近代日本の多くの画家達に少なからぬ影響を与えた南画、文人画の歩みをたどり、近代におけるその歴史的意義を考察することにより、18世紀から受け継がれてきた南画に息づく日本的精神をも探ろうとするものです。
また、2008年は兵庫県ゆかりの画家、村上華岳(1888-1939)、水越松南(1888-1995)の生誕120年にあたります。彼らはその人生においても、作風においても全く別の道をたどりましたが、華岳の思索的な制作態度から生まれる作品は文人画とも並び称され、松南の内面の自由を重んじた作品も、南画の近代的な解釈とともに論じられています。
華岳、松南の画業を顕彰するとともに、彼らの創作に共通する「南画・文人画」という絵画領域に着目し、展覧会を通じて、南画に託されてきたそれぞれの画家たちの思想、そこからみえてくる日本人の美意識を感じとることができればと思います。
南画って
中国の南宗画、文人画を起源とする南画は、18世紀の日本で成立した日本絵画の重要な領域のひとつです。明治に入り、学校制度や展覧会組織が整備され美術の近代化が推し進められていく中で南画は一時伝統保守のジャンルとしての位置づけを余儀なくされました。しかし、明治後期から昭和初期にかけて南画の主観主義的な表現に着目した画家たちが、南画に近代的解釈を加えて創作活動に生かし、新南画とよばれる作品を生み出していったこと、一方従来の南画家たちも近代的感覚を採り入れようと研究を重ねたことなど、南画再評価の気運が高まりました。日本画家洋画家を問わず、当時の画家たちが南画に東洋的な精神と、西洋美術にも匹敵する表現主義的傾向を読みとろうとしたことは、南画の歴史の中でも重要な事項のひとつといえましょう。
村上華岳・水越松南
村上華岳(1888-1939)は近代の日本画史上重要な画家であり、墨を基調とした独特の表現で精神性の高い作品を発表しました。また水越松南(1888-1995)は、異色の南画家とも称され、従来の南画の枠にとらわれない自由で独創性あふれる作品で知られています。
前期:4月22日~5月18日 後期:5月20日~6月8日