西宮市が2008年4月1日に中核市に移行するのを記念して、西宮にゆかりの深い美術家を紹介する展覧会を開催します。神戸と大阪、二つの大都市の中間に位置する西宮は、海と山に近く温和な気候で良水にも恵まれ、古くから酒造業が盛んなところでした。明治末以降、相次いで開通した私鉄の沿線開発により、モダンで先進的な住宅都市として、多くの人々が移り住みました。そこには美術家たちも集まり、やがて文化の薫り高い街へと発展し、多くの美術家たちが活躍していきました。
本展ではそうした作家たちの中から、戦後関西の洋画壇の重鎮であり、美術教育にも携わった洋画家の伊藤慶之助(1897-1984)、抽象画に平行して具象画も描き、『街道をゆく』の挿絵でも知られる洋画家の須田剋太(1906-1990)、陶芸にシルクスクリーンの技法を取り入れ、聖書シリーズなど独創的な作品を発表した現代陶芸の荒木高子(1921-2004)、日本のグラフィックデザイナーの先駆として、メンソレータムのキャラクターをはじめ数多くの著名なデザインを手掛けた今竹七郎(1905-2000)、抽象画家として国際的に評価され、ユニークな野外美術展を企画した津高和一(1911-1995)、石の彫刻を制作し、「環境造形Q」の一員としてパブリック・アート(公共彫刻)のあり方に一石を投じた山口牧生(1927-2001)ら、様々なジャンルにおいて活躍した6人の作家を取り上げます。約80点の作品を展示すると共に、関連の資料により西宮ゆかりの美術家たちが残した偉業をあらためて振り返ります。