平成20(2008)年が紫式部の『源氏物語』が著されてからちょうど千年にあたるのを記念して、人間国宝・志村ふくみ(大正13(1924)年、滋賀県生まれ)の紬織り『源氏物語』シリーズ約20点を展示します。80歳を目前にした志村がこのシリーズの制作を思い立ったのは、住まいの近くの清涼寺(嵯峨釈迦堂)境内に、光源氏のモデルともいわれる源融(みなもと・とおる)の墓所があることに気づいたのがきっかけでした。紬織りならではの抽象的な織り柄でありながら、タイトルはそれぞれ物語りの各帖からとられ、物語の内容に沿った景色や登場人物の心の動きまでもが見事に表現されています。