北島敬三の「PORTRAITS」のシリーズは、1992年に始まり、現在もなお進行中のプロジェクトである。数百人以上の人々が、継続的に、同じ条件下(白バック、白いシャツ、正面)で撮影されている。その作品点数はすでに2000点におよぶ。初期の段階では、微妙な差異の反復によって、人間の顔が持つ歴史的、社会的、近代的な同一性そのものが繰り返し問い直されていた。しかし近年は、加齢によって現れる老いへの不可避的な変化によって、むしろ人間そのものの同一性が問われはじめている。 北島敬三は昨年秋に伊奈信男賞を受賞し、今回が受賞後初の個展となる。今回は「PORTRAITS」のシリーズより、25点が展示される。おそらく、これまでだれも見たことのない写真イメージと出会うことになるだろう。