寺山修司 (弘前市出身/1935-83) は県立青森高等学校時代、「俳句」によって表現活動をはじめ、早稲田大学進学後は「短歌」の世界へ、その後凄まじいスピードでラジオ、テレビ、映画、そして競馬やスポーツ評論の世界を駆け抜けていったマルチアーティストです。1967年には「演劇実験室◎天井棧敷」を立ち上げ、人々の旧来的な価値観に揺さぶりをかけ、さらには多岐にわたる活動の中、美術、デザイン、音楽といった様々なジャンルで新しい才能を発見し、育てていったことも特筆すべき業績の一つと言えましょう。
本展は、美術館の5つの企画展示室それぞれを寺山の小宇宙と見立て、文学、演劇、映画、美術、音楽、スポーツといった様々なジャンルの作品、資料の展示を行います。その総体として、多岐にわたる寺山の活動が一望でき、その存在の意義が理解できる寺山修司展としては過去最大級の規模となります。
さらには、今年没後25年を迎える寺山の現在を、テラヤマ美学の最大の理解者である美輪明宏による「毛皮のマリー」の舞台装置、衣裳で現出させ、様々な関連資料もあわせて公開します。
コミュニティギャラリーでは、寺山修司と同時代に活躍した多彩な才能を紹介する同時開催展として、秋田県出身の舞踏家土方巽の資料を中心に、澁澤龍彦、種村季弘、唐十郎といった作家、演出家の仕事を紹介し、寺山の活躍した時代の世相を振りかえります。
「昭和」という時代に注目が集まる現在、寺山の華やかで多彩な活動をとおしてその時代に想いを馳せていただくとともに、寺山が残した言葉や思想から混沌とした今の時代を生き抜く智慧を感じ取っていただければ幸いです。
-「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」 寺山修司
併設企画:「土方巽と日本のアヴァンギャルド」
会場:青森県立美術館コミュニティギャラリー(A-C)
寺山修司と同時代に活躍した多彩な才能を紹介する併設企画。1960-70年代の前衛芸術運動を総体的に振り返り、寺山の活動した時代相を明らかにします。本展では特に秋田県出身の舞踏家土方巽を中心としつつ、東北の風土や精神性が日本のアヴァンギャルドに与えた影響を考察するとともに、土方とゆかりの深い澁澤龍彦、種村季弘、唐十郎といった同時代に活躍した作家、演出家の仕事を様々な資料によって多角的に検証します。