東京の山谷、横浜の寿町、大阪の釜ヶ崎。人権問題や労働問題などを抱えるこの町を今までにも多くの人間が記録し、発表してきた。今、私がこの町を写真に撮り発表することは、傲慢な正義からではない。下を向いて歩き続けて見えてくる汚れた地べたや吹き溜まり、この町が在り、人間が暮らしているという目の前の事物に対する私の直観からである。 人間への興味は、その人の持つ傷であり、見た目から始まるはずだ。直視することで照射されるのは私自身であるのかもしれない。監視社会の中で私たちが、見ることを躊躇してしまう人間の持つ傷、無視してしまう生を私は見続けようと思う。