近代工芸を創造してきた多くの工芸家たちは、豊かな自然が育む花の美しさや形象を描写し造形化してきました。伝統の色絵や蒔絵、友禅といった、箱や皿・鉢等の立体の器物や着物、衝立や屏風等の平面に工芸の規範的な意匠として洗練を見せ、工芸の魅力とともに作者の創意や個性、心情を巧みに表しています。明治期を代表する七代錦光山宗兵衛や初代宮川香山の色絵花瓶や、二代横山彌左衛門《菊花文飾壺》ほかの国の登録美術品5点をはじめ、伝統工芸のうちにクラシックとモダンを融合し現代工芸を刷新させてきた作家らの主要作品等、近代から現代へと発展してきた日本の工芸界を代表する作家らが花を主題として制作した名品約60点を紹介します。
近代の人形は、先駆的に創作表現を示した竹久夢二や川崎プッペ、五味文郎、伝統を基調とした平田郷陽や堀柳女、鹿児島寿蔵、野口光彦らの創作が中心となって発展し、さらに友永詔三や浜いさを、四谷シモン、大島和代らが現代の造形としての可能性を見出し独自の創造としてきました。今回は、そうした人形作家の代表的な作品27点と併せてアクセル・ルーカスら外国の人形作家の作品や、陶芸の藤平伸や染色の芹沢銈介、長尾紀寿、金工の原正樹らの工芸作品、グラフィック・デザインの杉浦非水や亀倉雄策、福田繁雄、ノーマン・ロックウェルらのポスター作品を陳列し、人の形象を主題とした芸術表現の対比を試みます。