油絵を描いたことのない人は多いと思われますが、誰でも一度は水彩画を描いたことがあるのではないでしょうか。その意味で、水彩画は最も一般の方に親しみのある画材であると思われます。この画材の特徴は、水で溶くだけという手軽さにあると思われます。このことから、美術教育の教材となったり、風景を写生するのに用いられたりしています。画家によっては、浮かんできたイメージをすばやく画面に定着させるために、油絵より手軽な水彩画で描くことを好む人もいます。
手軽さと並んで、もうひとつ水彩画の特徴としてあげられるのは、余白を活かした表現が可能であるということです。油絵の場合、通常は画面の角から角まで絵具を塗りますが、水彩画の場合重要な部分だけを描いて、あとは余白のまま残しておくという描き方でも十分に成り立ちます。こうした特性から、物語の挿絵や絵本などでは、ペン画などと並んで水彩が多く用いられているようです。
本展では水彩画のもつ特性の部分に注目し、水彩表現の可能性をさぐっていきます。