「荒野のグラフィズム:粟津潔展」は、ノート、ドローイング、未発表作品、実験映像、新資料を含め、金沢21世紀美術館が所蔵する約2600点に及ぶ粟津潔作品より主要な1750点を一堂に展観し、有形無形の粟津芸術の全貌を捉え、その現在性を問いかけようとするものです。
粟津潔は、「私はすべての表現の分野に、その表現の境界を取り除くだけではなく、階級・分類・格差・芸術に現れた上昇と下降も、取り除いてしまいたいと決断する」と述べ、あらゆるジャンルを横断して実験的な表現に挑みました。第二次世界大戦後の日本の混乱期に独自の表現活動をスタートした粟津は、日本におけるグラフィック・デザインの礎を築き、常に同時代の世界を見晴らしながら、絵画、ポスター、版画、ブックデザイン、建築、音楽、映像、パフォーマンス、演劇など多様な領域を縦横無尽に往来してきた奇才であると言えるでしょう。