董其昌(1555~1636)は万暦17年(1589)、高級官吏登用試験である科挙に及第し、官途を歩むかたわら、書画に妙腕を発揮しました。書ははじめ唐の顔真卿や虞世南を学びましたが、これに飽き足らず、魏晋の書に遡りました。
さて、明時代の中期に盛行した文徴明の書風は、この頃にはすでに形骸化していました。董其昌はこうした固定化した形式を否定して、天真爛漫で平淡な表現を目指しました。董其昌の優れた実績と理論は、明末から清初に展開される革新的な書風を導き、後世にきわめて大きな影響を与えることとなります。董其昌のさまざまな作品とともに、董其昌の影響を受けた清時代の諸家の書をあわせて陳列します。