現在では坐雛が主流ですが、雛人形が飾られるようになった江戸時代のはじめには、立雛が一般的でした。立雛は自立できないので、壁などに立てかけて飾ります。やがて寛永雛と呼ばれる坐雛が登場すると、享保雛、次郎左衛門雛、古今雛と、江戸時代を通じて雛人形に流行が生まれました。
江戸時代も後期を迎えると、男女一対の雛人形に婚礼のイメージが重ねられるようになります。従者や婚礼道具が加えられ、現在目にするような雛段を重ねた「段飾り」の形式が、江戸、つまり現在の東京で生み出されたのです。もちろん、京都や大坂といった上方にも段飾りはありましたが、上方の雛段は二段程度と低く、最上段に内裏雛が住まう御殿を置く「御殿飾り」が主流でした。京都国立博物館の「雛まつりとお人形」展では、このような雛人形と雛飾りの変遷がご覧いただけます。
また本年も、京都の地で人形を保存・公開している、京都文化博物館・博物館さがの人形の家・宝鏡寺門跡とともに、「京の雛めぐり」と題し、協力して展覧会の紹介を行います。
近年は大揃えの雛段を飾ることも珍しくなりました。ご家族づれで展示をめぐり、童心にかえって人形の世界をお楽しみください。