北海道立旭川美術館では、開館以来25年にわたって木を素材とした造形作品を収集してきました。近現代の彫刻をはじめ、伝統木工芸や「あそびの木箱」、椅子など、現在その数は190点となります。
ところで、ひと言で「木を素材とした造形作品」といっても、素材となる木には驚くほどたくさんの種類があります。また、高度な技術で木を自らの思うままに扱う作家がいる一方、木そのものの力をストレートに伝えようとする作家がいたり、あるいは木と格闘しながら自らの造形をつくりあげる作家がいたりするなど、木と向き合う作家の姿勢もさまざまです。
どのような特質をもつ木をどのように用いるかによって、作品の視覚的な印象はもちろん、鑑賞者に訴えかけるメッセージもまったく異なってきます。だからこそ、材の特質を見極めて選び、どのような姿勢で制作するかということは、作品を通して自分が伝えたいことを表現する作家にとって、とても大きな意味をもつといえるでしょう。
この展覧会では、当館のコレクションを通して、作家たちが木といかに向きあい独創的な造形をつくりあげてきたのかを、「木を彫る」「木とあそぶ」「木と憩う」などの視点から探ります。木と作家、あるいは木と人間との関係をみつめながら、森の贈りものともいえる木の豊かな可能性や、木をめぐって広がる造形の楽しさを感じていただければと思います。