滋賀県立近代美術館では2月9日(土)から3月30日(日)まで「信・望・愛―理想の居場所をつくる ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」を開催します。滋賀県・近江八幡市を拠点に建築家・実業家として活躍したヴォーリズの活動の軌跡をたどる展覧会です。
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880-1964)は、アメリカ・カンザス州に生まれました。熱心なキリスト教徒であり、現在の八幡商業高等学校の英語教師として1905年に来日、英語教育とともにキリスト教教育にも力を注ぎますが、それに危機感をもつ住民たちの要請によって1907年には教師の職を解かれました。しかしヴォーリズは近江八幡にとどまり、建築事務所や現在の近江兄弟社を設立し実業家として活躍する一方、伝道活動にも力を注ぎ、1941年には日本国籍を得て一柳米来留(ひとつやなぎ・めれる)と改名、1958年には近江八幡市名誉市民第1号となり、1964年に近江八幡の地で亡くなります。
ヴォーリズは近江八幡に事業の拠点を置きながら、夏季には軽井沢に滞在し、全国の宣教師などに知己を得て、建築事業を拡大させました。ヴォーリズの建築は日本全国に、そして韓国など海外にも建てられ、現在も保存活用されています。それらはキリスト教伝道者としての使命と理念にもとづき、合理性と簡素さを目指しつつ、日本の風土となじんだ親しみやすく清明な様式を備えていました。ヴォーリズの建築が時代を超え、地域や国境を越えて親しまれてきたのは、その特徴ゆえといえましょう。
ヴォーリズが建築設計監督事務所(後のヴォーリズ建築事務所)を開業してからちょうど100年にあたる2008年に開催されるこの展覧会では、ヴォーリズが残した建築作品を写真や映像資料、模型や資料などから紹介し、生活との調和をめざしてヴォーリズが作り出した建築空間の特徴を学校や教会、商業建築や住宅などの作品のなかに見てゆき、建築をとおして理想の生活を築こうとした、ヴォーリズの活動と思想の系譜をたどります。また会場にはヴォーリズが軽井沢に設けた山荘を実物大で再現します。
「理想の居場所を作る」ことに生涯をかけたヴォーリズ。その世界を是非ともこの展覧会でご体感いただけたらと願います。