斎藤寿一(1931-1992)は、生まれ育った川崎市にアトリエを構え制作活動を続けた版画家です。斎藤寿一が作家として活躍しはじめた1950-60年代は、戦後の日本美術の歴史の中では版画の時代といえるでしょう。浜口陽三、棟方志功などが海外で高く評価されたことによって、多くの版画家が誕生しました。斎藤は27歳でパリに渡り、S.W.ヘイターの銅版画工房「アトリエ17」で学んだ技術をもとにして、1963年に確立した独自の作風から「青のサイトウ」とよばれました。そして、版画にとどまることなく、絵画や立体などさまざまなメディアを通して、風や宇宙といった実際には目に見えないものを表現しました。
本展覧会は、版画家としての出発点である銅版画から、「青」のシリーズ、「風」「宙」をモティーフとした作品を中心に、斎藤寿一の画業を紹介します。