1960年代終わりから写真家として本格的な活動を開始した土田は、日本の土俗的な文化、ヒロシマ、高度経済成長、バブル経済などのテーマを通して、変貌する日本の姿を撮り続けています。土田の視点はつねにユニークで、作品ごとに明確なコンセプトを持ち、日本という国に対する問題意識を実験的ともいえるアプローチで表現してきました。「自己表現」と「徹底的な記録」の両面を行き来することで進化を遂げてきたこの作家の作品からは、社会性と時代性を背後に日本が抱える問題を汲み取ることができます。
この展覧会では東京都写真美術館が重点的にコレクションした土田作品に加え、最新作を含めた約140点で、氏の作家活動の軌跡を一堂に紹介します。混沌とした世相のなか、土田作品は日本と自己の関係を見直す何らかのヒントをくれることでしょう。