平成2年に長崎県の名誉県民として顕彰された彫刻家・富永直樹(長崎市生まれ/大正2~平成18)は、東京美術学校彫刻科在学中の昭和11年に文展(日展の前身)に初入選して以来、日展を主な舞台に活躍した長崎が誇る彫刻家です。昭和25年から27年にかけ、三年連続で日展の特選を受賞するなど華々しい活躍を繰り広げたその実績は、日本芸術院会員任命(昭和49)、日展理事長就任(昭和54~58)、文化功労者顕彰(昭和59)、文化勲章受賞(平成元)などの経歴に見られるように広く認められているところです。また、あまり広く知られていませんが、昭和24年に発表された国産四号電話機やヒット商品となったプラスチックラジオSS-55(昭和27年、三洋電機)のデザインを手がけるなど、戦後のインダストリアルデザインの先駆として今日につながる産業界のデザイン的基盤形成にも大きな貢献をなしてきました。
この展覧会は、美術館ではじめて展示する大型作品も含め約50点の作品により構成されます。後進の教育のために作品は触ってもらってよいという作家の遺志を受け、来館者が作品(ブロンズ作品のみ)を手で触れることが出来る展示を行うほか、インダストリアルデザインの仕事も紹介します。この機会に、ぜひ富永芸術の魅力を堪能してください。