女性を描くことは、美術の世界でも最も興味深いテーマの一つだと言ってよいでしょう。江戸時代は浮世絵の流行とともに美人画が好まれた時代でした。明治以降も根強い人気を保ち、浮世絵の流れを汲む鏑木清方やその門下の伊東深水、山川秀峰らが東京で活躍しました。上方では上村松園や北野恒富、島成園、土田麦僊、菊池契月らが印象深い名品を残しています。
本展は、長い年月と情熱をかけて「美人画」を蒐集してきた培広庵氏のコレクションから、これらの画家たちの作品をはじめとする83点を特別公開するものです。
培広庵コレクションの特色は、大正時代から昭和初期にかけて描かれた日本画に見られるような、どこか憂愁を含んだデカダンスな傾向を持った魅惑的な作品群が、画家たちが活躍した東京、京都、大阪、そして金沢といった都市ごとに分けられ、系統的に集められていることにあります。コレクションからは、それぞれの街が持つ時代と世相、女性美の変化を見て取ることができます。
現代の女性たちは、ライフスタイルと共にファッションにも個性的な美を自由に表現できる時代に生きています。現代からこれらの美人画を眺めたとき、当時の画家たちは女性に何を見て何を見なかったのか。そこに、女性に対する時代の価値観の一端を窺い知ることもできるのでないでしょうか。
本展では、一人のコレクターの目を通して選ばれた「美人画」と言われる女性美を時代や世相の変化を背景に分かりやすくご紹介いたします。