若いときから仏像彫刻を数多く撮ってきた土門拳でしたが、現代彫刻に関しても、すでに昭和十年代から高村光太郎の作品や荻原守衛の作品などに、興味を抱いて写しています。
今回展示する51点は、箱根彫刻の森美術館10周年を記念して1979年にサンケイ新聞社から発刊された写真集「現代彫刻」で発表された写真です。当時、箱根彫刻の森の作品の中から好きな彫刻を選び、足かけ4年をかけて撮影した写真に、友人知己の詩人たちがそれぞれの詩を添えました。また旧友原精一さんが土門の肖像をデッサンして本の扉を飾り、亀倉雄策さんが造本レイアウトし、とまさに土門拳を囲む友人達の固い友情の絆が花を咲かせた写真集でした。
「僕は彫刻が大好きなんだ。」
車椅子でありながら、熱く被写体を追った土門拳の最晩年の作品です。この年1979年の9月に脳血栓で倒れ、以後意識不明が続いた土門拳は、その後1990年に他界するまでついに目覚めることはありませんでした。彫刻の好きな方、詩の好きな方、みなさんにみていただきたい写真展です。