初代歌川広重は、≪東海道五拾三次之内≫シリーズをはじめとする優れた名所絵を数多く残し、安政5(1858)年に62歳で亡くなりました。今年はその150回忌にあたります。
広重は、肉筆画において浮世絵師のなかでは多作であり、また太田記念美術館は、高いクオリティの広重の肉筆作品を所蔵しております。そこで当館では150年遠忌を記念して、天童織田藩の財政難を救うために制作された肉筆画群をはじめとする初代の優品を主に、紹介される機会の少なかった二代から四代までの肉筆画約60点を展観いたします。
なかには初代広重の美人画「芸妓立姿図」や三代広重の「東海道五十三次の内 庄野 白鳥塚」など、今回初出品となる作品約5点が含まれます。 また、広重が十歳のときに描いたと伝えられる「三保松原図」と「琉球人来貢図巻」が初めてともに展示されます。
そのほか、初代および三代の画稿類、初代広重の≪東海道五拾三次之内≫「蒲原 夜の雪」「庄野 白雨」、≪名所江戸百景≫ 「大はしあたけの夕立」「亀戸梅屋舗」をはじめとする、それぞれの版画における活動を伝える代表作約40点、また資料としては、広重の遺言状や遺品、伝二代広重作「安藤(歌川)広重像」、五代広重作「雪月花」を併せて出品いたします。
歴代の広重が一筆一筆直に描いた肉筆画や画稿類、そして代表的な版画を通して、広重代々の創作活動をご覧いただき、遺書や肖像画といった周辺資料から、立体的に広重の人物像を浮かび上がらせてゆきます。