闇の中に湧き上がる光。光が描きだす幽玄な空間。近年の中上清(1949-)は、どこにもない光と空間を絵画の平面上に創り出してきました。今回の展覧会は、美術館で開催される初めての本格的な個展となります。出品される新作約20点は、近年ではソウルやニューデリーやパリなど国際的な舞台でも活動を展開する現代作家の旗手、中上清の新たな境地を示すものです。
また、カンヴァスのアクリル画に本格的に取り組み始めた1970年代末から最近にいたる中上清の芸術の展開をたどる作品約15点も合わせて展示します。初期の幾何学形を用いて錯覚を生じさせる作品や1980年代初めの色彩鮮やかな作品から、1980年代後半から1990年代半ばにかけての金箔貼りの屏風を想起させるような作品、そして、1990年代末以降の光と空間を表す作品、これらの中には、1995年の「今日の日本画 第13回山種美術館賞展」に出品され日本画の概念についての議論を醸した作品や2001年の「第10回インド・トリエンナーレ」出品作品(国内未公開)もあり、これまでの画業を通観することができると同時に、現代作家、中上清の今後の展開をも予期させることでしょう。