武者小路実篤は、昭和30年、70歳のときに終の住処を求めて調布市仙川に移り住み、90歳で亡くなるまで20年間をこの地で過ごしました。
実篤の文学者としてのスタートは、明治43年(1910年)に友人たちとともに創刊した同人雑誌『白樺』でした。当時、文壇は自然主義が主流でしたが、『白樺』の個性を尊重し自我を肯定する姿勢が、同世代の若者たちの共感を得て、理想主義、生命主義と評される、大正時代へと展開する新しい流れを作り、文学のみならず美術をはじめ近代の文化に広く大きな影響を与えました。
本展では、このような『白樺』を紹介するとともに、実篤、志賀直哉、有島武郎、柳宗悦らの原稿や書画、岸田劉生、梅原龍三郎らによる実篤著書の装幀・挿絵原画など、同人たちの作品を展示し、あわせて書簡や写真などから生涯続いた彼らの交友をたどります。