ナポレオン・ボナパルト(1769-1821)。彼は、フランス革命後の混乱期に、ヨーロッパ統一のロマンを掲げ、颯爽と歴史の表舞台に躍り出た英雄として知られています。その政治的・軍事的才能と、たぐいまれな指導力によって、ヨーロッパ全土に革命の精神を広めた彼は、その一方で芸術・文化・教育の振興といった文化政策にも大きな情熱を注ぎました。
エジプト遠征の際に、多くの学者や芸術家からなる学術調査団を同行させ、エジプト学の基礎をつくり、また、ルーヴル宮殿を美術館として広く一般市民に開放しつつ、地方にもさまざまな美術館を設置しました。革命で衰退したジュエリー産業を復活させたのもナポレオンでした。さらにこの時代には、古代ギリシアやローマの美術を現代風に甦らせた「帝政様式」と呼ばれる勇壮華麗な美術様式が花開きました。このように19世紀初頭のヨーロッパの文化・芸術は、まさにナポレオンの存在によって大きく発展したのです。
本展では、ナポレオンの幅広い文化性に焦点を当て、同時代の絵画、彫刻、工芸をはじめ遺品や愛用の品々など約100点を公開し、ナポレオンが未来に残した「精神の遺産」を紹介します。