深沢幸雄は1924(大正13)年に山梨県南巨摩郡増穂町に生まれました。東京美術学校彫金部を卒業した後、駒井哲郎や浜田知明の作品の影響を受けながら、独学で銅版画を始めました。初期には、ダンテの『神曲』をモティーフにした連作など、自己の内面や人間の感情の奥底を表現したモノクロームの作品を多数制作しました。1963(昭和38)年に版画教育のために初めてメキシコを訪れた深沢は、メキシコの古代文明やモンゴロイドの歴史に想を得て、壮大で叙事詩的なテーマを取りあげるようになります。それらの作品には、鮮烈な色彩といくつもの銅版画技法が用いられ、深沢独自の幻想的なイメージが表されています。その後深沢の作品は、ユーモラスながらどこか憂愁を感じさせる、詩情に満ちたものへと変化していきます。
本展では、山梨県立美術館が所蔵する銅版画の代表作に加え、近年新たに寄贈された初期から近作までの版画、陶器やガラス絵、書、更には深沢が蒐集した中米の民族衣装など約160点を展示し、深沢幸雄の創作の軌跡を辿ります。