「山」を描いた絵画には、古くは山岳信仰に由来した曼陀羅絵など、信仰の対象物として描かれたものがありました。やがて、中国から山水画が伝わりますが、多くは実際の景色を再現したものではなく、創作され理想化された「風景」を描いたものでした。
しかし、近世に入ると写生の意識が高まり、「山」を主題とした絵画に取り組む作家なども現れてくるようになります。そして、近代以降は「山」が信仰の対象や生活の糧を得る場所だけでなく、楽しむための場所へと領域を広げ、実際に山に分け入って描く山岳風景画と呼ばれる作品も描かれるようになりました。
今回は所蔵品の中から、近代以降の山水画や、山を描いた風景画など「山」をテーマにした作品を集めて展示し、山へ志向した画家たちの作品と背景を探ります。簡単な登山ガイドも添えてちょっぴり山行体験に浸れます。奥多摩の帰りに登山靴のままどうぞ。