大正時代から昭和初期にかけて、旺盛な制作活動を展開した柳瀬正夢。本展では柳瀬とロシアとのかかわりに焦点をあてます。
大正9(1920)年、柳瀬は「日本に於ける最初のロシア画展覧会」を見ており、このころから未来派やキュビスムに傾倒した作品を本格的に手がけるようになります。次第に社会主義への思想的共鳴を深め、プロレタリア運動のポスターや風刺画の制作へと移行します。戦時色が強まる中、治安維持法違反容疑での逮捕という過酷な時期を経て、昭和17(1942)年の満州旅行ではロシア人入植地ロマノフカ村を訪ね、多くのスケッチと俳句を残しました。
本展はロシア前衛美術と出合った時期の絵画作品、プロレタリア運動に係わる原画類、そしてロマノフカ村でのスケッチを中心に構成されます。柳瀬作品の新たな魅力を知るとともに、彼の作品を残して、ロシアの美術や社会の一端にふれていただければと思います。