今回の展示では、古代日本において律令国家の転換点となった8世紀末から9世紀初めの桓武朝を中心とする時期に焦点をあて、その前後で国家と社会がどのように変化していったかを王権と都市(都城)をテーマとして展示します。本展示は歴博の公募型共同研究「律令国家転換期の王権と都市」(研究代表 三重大学・山中章)の研究成果を分かり易いかたちで示すことを大きな目的としています。
近年の発掘成果によれば、長岡京(784)は、平城京(710)から平安京(794)への過渡的な都ではなく、すでに平安京の要素を多く先取りした先進的な都でした。しかし、なぜか十年で廃棄されてしまいます。桓武朝は、以後千年の首都となった平安京造営と「征夷」による国域の確定という意味で、前近代における中心と周縁の枠組みが定まる画期となった時代でもありました。この激動の時代を、王権・遷都・都市・戦争などの現代的視点から考えます。なお、ビジュアルに長岡京を理解していただくため、バーチャル平安京(文部科学省グローバルCOEプログラム「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点」(立命館大学)・(株)キャドセンター 制作、協力:京都市・京都アスニー・向日市教育委員会)を基礎として、長岡京版を製作し、展示場で映写するとともに、長岡京をウォークスルーする仕掛けにより体感していただきます。
<展示構成 >
プロローグ~遷都・戦争・怨霊~
第1章 王権の転換
第2章「征夷」と城柵の実像
第3章 長岡京から平安京へ~二度の遷都と都市生活~
第4章 時代の移り変わり
エピローグ~東国と「みやこ」~
<主な展示資料>
水垂遺跡出土人面墨書土器
長岡京東院跡出土井戸枠
千葉県馬込遺跡ほか出土瓦塔
名古屋大学所蔵固関勅符
寛平遺誡(重要文化財)
小野宮年中行事裏書(初公開)
その他、長岡京・平安京・斎宮・多賀城などの発掘資料多数