明治から昭和初期に活躍した神坂雪佳(1866-1942)は、西欧へと眼を向ける芸術家が多い時代に、伝統的な日本の美である琳派を優れた装飾芸術として認識し、京都で復興させた。また画家としてだけでなく、図案家として工芸家へ図案を提供したり、室内装飾を手掛けるなど、多面的な活動を展開している。
雪佳の作品は、琳派の伝統的なモチーフやデザイン性を意識しながらも、モダンかつ大胆である。琳派に共感しつつ、柔和で鮮やかな色彩が雪佳独自の世界として現代人にも身近な美として受け入れられ、その人気は高まる一方といえる。
当館では7年前に「京の琳派意匠―光琳から雪佳へ―」を行なったが、10回目の琳派展では、雪佳の絵画作品に加え、工芸図案家として活躍した面にも焦点をあてる。また、雪佳旧蔵作品や古画学習の様子にも注目し、雪佳が想い描いた美の世界や、琳派に対する意識にも迫る展観としたい。