今年、東京美術学校の創立から120周年を迎える東京藝術大学では、これを記念した展覧会「岡倉天心-芸術教育の歩み-」を開催いたします。本展は、本学の創設に深くかかわり開校まもなく校長となった天心・岡倉覚三(一八六三-一九一三)の業績を、東京美術学校在任時代を中心として多角的に検証、紹介するものです。天心の行った美術に関する仕事は、美術学校の教育環境の整備や学生指導にとどまらず社会連携制作の推進、美術団体の支援、美術行政の整備のほか、博物館事業、美術史の編纂、評論、文化財保護など広範囲にわたっています。本展では、天心の本校在職期間である明治20年代の活動を中心に構成しながらも、その後の仕事についても「芸術教育の歩み」という観点からとらえ直していきます。天心の遺志をついだ歴代教官や卒業生たちの活動を追いながら、今日の東京藝術大学に引き継がれてきたものに注目していこうというものです。
本展は、国立大学法人として再出発した本校が今後のあり方を探っていくためのひとつの契機となることでしょう。