大正・昭和に活躍した前衛日本画家玉村方久斗(善之助/1893-1951)は、最初日本美術院に出品し頭角を現しました。しかし、より新しい日本画の表現を求めて日本美術院を脱退し、さらに「第一作家同盟(D・S・D)」、「三科造形美術協会」、「単位三科」などの前衛運動に身を投じていきます。当時の前衛運動はほとんど洋画家たちによって推進されたと言っていいなかにあって、玉村方久斗は一人、前衛的な日本画の世界を切り拓いていきました。この時期、玉村方久斗(善之助)は、立体造形の前衛的な作品(現存せず)を発表し、さらに前衛的な雑誌『エポック』や『ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム』の創刊にかかわりました。また、版画の制作も精力的に行い、その多彩な創作活動振りを発揮しています。一方では、今回80数年ぶりの本格的な公開となる九巻の画巻による大作《雨月物語》(1923-24)や《保元物語》などのシリーズで独自のグロテスクで諧謔的な画風を展開して、斬新な日本画を描きつづけました。そして新しい日本画を広めようとする玉村方久斗は、自ら「方久斗(ホクト)社」を結成して、同志とともに発表の場をつくりだし、キャッチボールをする親子を描いた《休日》(1931)のように生活断片を描いた作品や生活感情を重んじた日本画をも制作しました。
本展では、波乱万丈な芸術的生涯を断片的にしか知られてこなかった玉村方久斗(善之助)の芸術の全貌を、約150点の作品と雑誌などの資料を通観することによって明らかにしようというものです。
会期中展示替があります
前期:11月3日~11月25日 後期:11月27日~12月16日