芹沢銈介(1895-1984)は、沖縄の伝統的な染色技法である紅型(びんがた)に触発され、それを深めて独創的な色と模様の世界を造りだしました。その領域は、着物や屏風をはじめ、物語絵、装幀、図案、字模様、インテリア・デザイン、建築など多岐にわたっています。
着物や屏風を芹沢造形の到達点とするならば、型染の図案や肉筆のスケッチ、板絵、ガラス絵などの小品は、創造の初動を感じさせる珠玉の作品群と言えるのではないでしょうか。そこではモチーフを見いだしたときの芹沢の喜びが鮮度を保ったまま鮮やかな色彩と躍動する曲線に活かされ、その天性の豊かさと明るさは、観る者の心を瞬時に掬(すく)います。
本展は、およそ100点の作品により芹沢銈介の造形をご紹介いたします。芹沢の仕事を半世紀にわたって見つめ続けた金子量重氏にご監修いただきました。この展覧会が皆様にとって芹沢造形の真髄に触れていただく機会となれば幸いです。