豊かな色彩と幻想に満ちたシャガール(1887-1985)の作品は、世界中の人々に親しまれています。恋人たちや花束、動物、サーカス、聖書といったモティーフは、いずれも深い愛情にあふれ、生命の喜びと平和への希望を人々に抱かせます。
シャガールの作品には、これらのおなじみのモティーフだけでなく、その背景としてさまざまな風景が描かれています。彼の芸術の源泉である生まれ故郷・ロシア(現在のベラルーシ)のヴィテブスクの街並みや、「第二の故郷」と呼んだフランス・パリの華やかな景色、晩年移り住んだ地中海沿岸の美しい景観など、多彩な風景が作品を彩っています。その風景は、ユダヤ人として生まれ、歴史の波にほんろうされながら各地を転々とした画家の生涯の軌跡であると同時に、自身の心情を伝える重要なメッセージとなっています。
生誕120年を記念する本展は、ロシア、アメリカなど国内外から、日本初公開の作品を含む約120点を一堂に会し、愛の讃歌とも言うべき偉大なる芸術を振り返ります。画家自身を投影した風景表現に、シャガールの新たな魅力を発見することでしょう。