鉄絵とは鉄分を含む顔料を用いて筆彩で文様をあらわす技法をいいます。入手しやすい身近な材料を用いることから、長い歴史があり、最も普遍的な絵付け技法として広く行われました。鉄絵は中国のほか、朝鮮、ベトナム、タイ、そして日本でも行われました。朝鮮では鉄砂、日本では銹絵(さびえ)ともよばれ、絵志野や織部も一種の鉄絵ということができます。青花(染付)のような細密な描写はみられないものの、民窯らしいユーモラスな表現や、量産品ゆえの勢いのある筆づかいには、独特の魅力があります。陶磁史の底流に脈々と受け継がれ、大胆で生気に富んだ絵付けに特色がある東洋の鉄絵を、時代、地域の粋を超えて概観いたします。
<主な出品作品>
鉄砂草花文瓶 朝鮮時代・17世紀
銹絵観鴎図角皿 尾形光琳・深省合作 江戸時代 重要文化財