今年のヴェネツィア・ビエンナーレを始め、ニューヨークを拠点として国際的に活躍しているイリヤ・カバコフ(1933~)は旧ソ連のドニエプロペトロフスク市で生まれました。現在は大規模な「トータルインスタレーション」※[注]で知られる現代作家ですが、旧ソ連時代には「非公式芸術家」として活動する一方で、1950年代から共産主義体制の中で絵本画家として生活していました。
今回の展覧会は、絵本画家としてのカバコフの創作を約100冊の絵本と、その原画約1000点によって、世界で初めて本格的に紹介するものです。絵本の多くは子ども向けで、カバコフが美しく、かわいらしく描き出した動物や乗り物、人々の暮らしなどは、本の内容から離れても、絵そのものとして十分に楽しむことができます。展覧会は、絵本の内容によって分けられた①生活 ②科学と産業 ③イデオロギー教育 ④物語 ⑤詩という5つの大きなセクションと、『オーシャと友達』というロシアに住むユダヤ人を扱った書籍を特集したコーナーそして、絵本に関連したドローイングのコーナーから構成されます。5つの大きなセクションについては、会期の前半(10月14日まで)、後半(10月17日から)でほとんどの作品が入れ替わります。
なお、毎月第1日曜日はファミリー・コミュニケーションの日として、18歳未満または高校生以下のお子様連れのご家族の方は、無料でご覧いただけます。また、10月13日(土)は4年前の葉山館開館を記念して、来館者はどなたでも入場を無料といたします。ぜひとも親子で、または子どもの頃に親しんだ絵本の世界を思い出しながら、海辺の美術館での1日をお楽しみ下さい。
※[注]:トータルインスタレーション
見る人が天井、壁、床、オブジェ、光、色といったあらゆる要素が結合したインスタレーションの中を進んでいくにつれ、それぞれの空間が劇的な展開を見せるもの