日本画の世界では、戦後すぐ、昭和22年から24年にかけて、敗戦で西洋文化がどっと日本に入ってきたこともあり、日本画の意義が再度問われました。しして、日本画というものは、従来の因習的な表現では世界に通用する絵画とはなりえないとの批判がにわかに起こりました。いわゆる日本画滅亡論です。それに対して、日本画の作家たちは、戦後の混乱を契機に、さまざまな立場から、新しい日本画を模索してゆきました。
山口蓬春や加藤栄三といった日展を舞台に活躍した画家たちは、伝統とモダニズムの融合を計り、モダンな画風を日本画の世界に作り上げました。また、明治以来の近代日本画の伝統を踏まえた荘司福や岩橋英遠といった院展の作家たちも、自然の美しさや不思議さのなかに清澄さを追い求め、それまでに見られぬ現代的な美的感性を日本画の世界で表現していきました。また、歴史画の世界に独自の道を切り開いた片岡球子は、それまでの日本画では考えられぬ土俗的なエネルギーを画面いっぱいに放出し、日本画世界をより広範に捉えていったといえます。このように戦後の日本画家は、伝統を考慮しつつ、革新を求め、外界と内面世界をうまく融合させながら、現代日本人の精神風土を照射してきたものといえます。この展覧会を通して、戦後の日本画の軌跡を再確認します。
出品作家は以下の24人です。それぞれの作家のすぐれた作品を当館の収蔵品の中から選んで総計26点を展示します。
山口蓬春、加藤栄三、中村岳稜、望月春江、伊東深水、三谷十糸子
高山辰雄、片岡球子、荘司福、岩橋英遠、小倉遊亀、岡本彌壽子
前田青邨、中島千波、上村松篁、吉岡堅二、工藤甲人、近藤弘明
上野泰郎、加山又造、麻田鷹司、堀文子、三上誠、中村正義