南フランスの貴族の家系に生まれながら、ダンスホールや劇場、娼館など19世紀末パリの歓楽の世界に入りびたり、そこに暮らす人々の姿を卓越したデッサン力で描き出したトゥールーズ=ロートレック。大胆で斬新な画面構成を特徴とする彼の作品世界は、描かれた対象への愛情と、鋭く社会を観察する辛辣な視線によって支えられています。その主要な仕事は、37年に満たない短い生涯の、早すぎた晩年の10数年間に集中していました。本展は、ロートレックが様々な分野で多くの傑作を残したこの時期に焦点を絞り、日本初出品となるオルセー美術館秘蔵のロートレック・コレクションをはじめ、各国から集められた油彩画の名品の数々、さらに版画とポスターの代表作を網羅し、挿絵や素描、関連資料などもまじえて、ロートレック芸術の本質に迫ろうとするものです。彼が大きな影響を受けた浮世絵版画との関係も検証します。同時代に活躍したゴッホやゴーギャン、セザンヌ、スーラなどとならんで、印象派後の新しい美術を創りだした、まぎれもない巨匠のひとりであるロートレックの世界を堪能する絶好の機会となることでしょう。