Biombo という言葉をご存じですか?この見慣れない綴りはポルトガル語やスペイン語で「屏風」を意味し、「ビオンボ」と発音します。この言葉は、日本の屏風が近世初期の南蛮貿易で交易の品として盛んに海を渡ったことを端的に示すものとして、文化史的にみても特別な意味をもっています。今回の展覧会は、日本文化において屏風がたどった歴史と、屏風が果たした機能や役割に関して、グローバルな視野から再検証を試みるものです。
日本の住空間を飾ってきた屏風は、日常的な間仕切りや風よけの機能をもつ他に、出産に始まる通過儀礼の場を飾り、婚礼調度品にもなりました。近世においては大広間を豪華絢爛に装飾する一方で、プライベートな空間の演出にも使用されたのです。また大画面であるがゆえの宿命として、襖絵が保存のために屏風に改装されることもあり、本来は一双の屏風が離れ離れになることも少なくありませんでした。本展では、その復元もみどころとなります。また屏風は、日本が誇る輸出品目に数えられ、古くは対明貿易の朝貢品として輸出され、南蛮交易の場でもBiomboという言葉が海外の地で定着したことが物語るように、盛んに西欧にもたらされました。江戸時代にも朝鮮通信使や、欧米諸国への贈答品としても選ばれたことが知られています。
今回の展覧会は、人々の夢を映してきた屏風の成立や展開をたどるとともに、とくに文化交流の側面で屏風が果たした役割に光を当て、海外からの里帰り作品を含めて屏風の名品を一堂に展示します。