かつて、紅灯の花街と呼ばれた二本木―。
絵師である古場田博は、2000年より西日本有数の遊郭外・二本木をテーマに絵画を制作しています。白川を挟んで、二本木の対岸に位置する本山町で生まれ育った古場田にとって、紅燈の街・二本木は華やかで妖しい魅力を放つ大人の世界でした。しかし、その遊郭も1958年に幕を閉じ、次第に熊本の歴史からその姿を消していきました。
遠くから聞こえるさんざめきに憧れ、思いを馳せた子供時代。古場田は広告代理店に就職、グラフィックデザイナーとして活躍した後、絵の世界へと活動の場を移し、五十歳を前に、あの日の二本木の情景を胸に抱きつづけたいという思いから、二本木の美しき光景を描き始めることになります。
人々を惑わせ、狂わせた夢の街、二本木。そこには、表に普段出すことができない人間の真の姿が現れていたのかもしれません。その瞬間は、懸命に生きる者たちが心を通わし、幸福を感じることが出来る温かな時が流れていたことでしょう。華やかに振舞いながら、その運命に涙した遊女達。控えめな色調は、人物の意思や人間性を引き出しており、作品には、遊女を始めとする二本木遊郭に生きた人々への愛と敬慕が込められています。今回は、二本木の盛衰を描いた全長40メートルにも及ぶ絵巻を中心に、絵画、立体、当時の貴重な写真や史料を展示します。約80年に及ぶ二本木遊郭の光と影の歴史文化、そこで繰り広げられた生きた人間のドラマをどうぞご堪能ください。