バーナード・リーチ(1887-1979)は、20世紀のイギリスを代表する陶芸家としてこれまで紹介されてきました。本展覧会では、リーチを単に陶芸家として語るのではなく、生活との関わりの中で造形を考え制作に励んだ芸術家としてとらえ、その創作活動を振り返ります。日本で出会い、試行錯誤や修正を繰り返しながら展開したリーチの生活と芸術の理念を、陶磁器、エッチング、素描、家具など約130点の作品から探ります。また、リーチが提案する新しい生活のスタイルや室内空間を、再現展示や写真を用いて紹介します。
幼少期を日本で過したリーチは、1909年再び来日し、この地で陶芸との運命的な出会いを果たします。イギリスに戻るまでの約10年間、リーチは柳宗悦を中心とする『白樺』同人らと深く交流を持つ中、その時代における生活造形のあり方について議論を深め、日常生活との関連の中で芸術をとらえる視点をもち始めます。このリーチの考え方は、椅子や棚など家具のデザイン、イギリスのセント・アイヴスで制作した器やタイル、新しい生活空間の提案などその後の全ての創作活動につながるのです。
本展覧会では、日本民藝館所蔵のリーチの作品が一堂に会されます。また、2007年はリーチの生誕120年にあたり、2008年3月には英国にある現在再建中のリーチ工房が一般に公開されます。この節目ともいえる時期に開催される本展覧会で、リーチの芸術を通して、現代を生きる私たちの暮らしや生活をあらためて考える機会となれば幸いです。