現在のベルギー北東部にあたるフランドル(英語名フランダース)地方は、油彩画の技法が完成し大いに発展した地方として知られています。なかでも17世紀に活躍したルーベンスとブリューゲル一族は、フランドル美術の黄金時代を築きました。
画家の王、バロック絵画最大の巨匠と称されるルーベンスは、アントワープに工房を構え、生涯に2000点ともいわれる作品を制作しました。キリスト教的主題や王侯貴族の栄光と権威を謳歌する神話的主題を、豊麗な色彩と壮大なスケールの構図で描きあげ、後世の画家たちに大きな影響を与えています。
一方、16世紀に活躍したピーテル・ブリューゲル(父)の子孫たちは、農民たちの風俗や、田園の情景を精密な描写と繊細な色彩によって生き生きと表現しました。その1人、ピーテル・ブリューゲル(子)は父の作品を大量に模写することによって、「ブリューゲル芸術」の普及と発展に貢献しました。彼らは政治、宗教、経済、など様々な面で劇的な変化を遂げつつあった17世紀ヨーロッパ社会において、時代を体現する優れた作品を生みだしたのです。
本展覧会では、さらにアントーン・ヴァン・デイクの肖像画、フランス・スネイデルスの静物画、ルーラント・サヴェレイの動物画など同時代に活躍した画家たちの多彩な作品、あわせて70点が展示されます。なかには、本展覧会のために特別に修復された日本初公開となる貴重な作品が数多く含まれています。この機会に、チェコが誇るプラハ国立美術館所蔵の名品をご鑑賞ください。