一九世紀、幕末の江戸民間画壇の巨星・谷 文晁(一七六三~一八四〇)は、南画・写生画・水墨画など、日本・中国の様々な画法を見事に折衷し、独自の画風を築き上げました。その画は上方に対する江戸独自の画風といえるもので、絶大な人気を集め、文晁のアトリエ・写山楼にはその画を求めて門前市をなしたといいます。
また、文晁は多くの弟子を育て、真偽は定かではありませんが、その数は一〇〇〇人を超えたという伝承もあるほどです。文晁一門は、幕府の御用絵師・狩野派一門に対し、江戸の民間の画壇で最大の流派となったのです。当時の江戸画壇は、酒井抱一・■(葛の中が人)飾北斎といった巨匠が活躍し、かつてない活況を呈していましたが、文晁もその中心的存在として君臨していました。当時の江戸民間画壇を考える上で、文晁、さらに文晁一門は避けて通ることのできない存在なのです。しかし、文晁個人の研究自体いまだ進んでいるとはいえず、ましてその門人たちに目を向けられることはありませんでした。
本展は、この文晁一門に注目し、文晁画風が一九世紀江戸画壇でどのように変遷し、影響を与えていったかの実体をつかむことを目的としています。文晁一門が幕末にどのような役割を果たしたのかを具体的に探るため、その弟子たちの作品を集めて展覧する初めての試みです。
出品画家 22名
谷 文晁、谷 幹々、谷 舜英、谷 文一、谷 文二、喜多武清、清水曲河、鈴木芙蓉、金子金陵、鏑木雲潭、遠坂文雍、大西圭斎、岡田閑林、依田竹谷、大岡雲峰、佐竹永海、鈴木鵞湖、目賀田介庵、立原杏所、渡辺崋山、大西椿年、森 東溟
展示点数
掛軸・屏風・画帖77件(うち重要文化財2点)
記念講演会
9月29日(土)「江戸文化の中の文人サロンの賑わい」
渥美國泰(俳優・江戸民間書画美術館館長)
10月6日(土)「谷文晁の生涯と画業」
河野元昭(秋田県立近代美術館館長)
10月13日(土)「東都時名画帖の全貌」
太田 彩(宮内庁 三の丸尚蔵館主任研究官)
いずれも当館講義室にて15:00~16:30、聴講無料、先着100名。