異なる土を重ねて文様のある生地土をつくり成形する古来の技法《練上》<ねりあげ>を探求し、これを現代的な感覚で蘇らせたことで高い評価を得た松井康成<まついこうせい>(1927~2003)の没後初の回顧展を開催します。
長野県に生まれた松井康成は、10歳代後半より茨城県笠間に住み、30歳の頃には同市内の古刹月崇<げっそう>寺の住職となりました。3年後には境内に窯を築いて中国や日本の古陶磁器研究を本格的に始め、やがて練上の技法に研究の的をしぼって、日本伝統工芸展や個展を中心に作品を発表しました。そして、1993年にはこの「練上手」<ねりあげで>の技術保持者として重要無形文化財(人間国宝)の認定を受けるに至っています。
本展では、線文様に代表される初期の作品にはじまり、ロクロを使用して内側から器の形をつくることで表面に亀裂を誘う「嘯裂」<しょうれつ>と呼ばれる作品から、磁器に近い土の組成と硬質な輝きを特徴とする「玻璃光」<はりこう>と作者が呼んだ晩年の作品に至るまでの代表作210点により、多彩な展開を示した松井康成の芸術をたどります。