明治維新以後、全国に小学校が設立され、学齢児童の就学が励行されるようになりました。新しい教育のはじまりは、教材・教具などにそれまでにはなかったものが取り入れられています。その代表的といえるものが掛図です。日本で掛図がつくられたのは、1873(明治6)年のことでした。掛図とは、学校の教室において黒板や壁面に掲げて教授に用いた大判の絵図や表などをさし、クラスでの一斉授業に用いる視覚教材として普及していきました。しかし、掛図は使用するたび損傷が進むし、大形であることから保管が容易でないことも加わり、使用されなくなったものは破棄されやすい運命にありました。そのため普及にもかかわらず、現存する掛図の数はそれほど多くありません。
当館では教育史コレクションの充実をはかるため、教科書と同様に掛図を重要な価値をもつ資料として収集を続けてきました。一部は2003年に開催した「明治前期教育用絵図展」で紹介いたしましたが、今回の展覧会はその続編として、主に小学校教育の場で使用されてきた掛図から教育の歴史をたどることを目的として企画したものです。
展示内容は、「明治初期の掛図」「検定教科書時代」「国定教科書時代」「戦後の掛図」というテーマで構成しています。当時の教育制度や時代背景をもとに、掛図をとおして子どもたちの学びの風景を紹介いたします。