四半世紀にわたり大田区山王で活動していた財団法人富岡美術館は、2004年春財団法人を解散し、収蔵品のすべてが早稲田大学會津八一記念博物館に寄贈されました。以来、會津八一記念博物館で開催される展覧会にごく一部が展示されていましたが、本展によって久しぶりにこのコレクションの東洋陶磁がまとまって展示公開されることとなりました。
富岡美術館の収蔵品は、日本重化学工業株式会社初代社長富岡重憲(1896~1979)が一代で蒐集した作品890余件と財団法人時代に寄贈・購入された10件の作品で成立っています。このうち三分の一ほどが東洋陶磁で、富岡氏は昭和20年代、伊万里の色絵鳳凰文鉢からコレクションを始めたといわれます。また、氏は客人をもてなす時、客人に合わせて茶碗を選び茶を供したことから、高麗茶碗・和物茶碗はそれぞれ20余碗、これに唐物茶碗をたせば茶碗類だけで50碗ほどになります。しかし一方、氏は茶を供するのには「茶碗と茶筅」があればよいとも考えていたようで、今回も展示されている織部の水指、伊部の茶入など茶碗以外の茶道具類がないわけではありませんが、その数は少ないといえます。
この陶磁コレクションのもう一つの特色は中国陶磁で、新石器時代から清時代の作品がそろっていますが、中でも中国清時代の大型で多彩な単色釉陶磁の作品群は、わが国の昭和30~40年代に成立したコレクションとしては珍しいものです。また、日本陶磁では有田の作品が充実していますが、小杉焼きの鴨徳利・吉田屋九谷の寿亀図鉢なども目に引きます。
中国・朝鮮半島・日本と作品が作られた風土の違い、時代による差異や共通性などへも思いを馳せながらご鑑賞いただければ幸いです。