近藤髙弘は、染付の伝統を現代に伝える近藤家に生まれました。祖父・父が染付によって自然の生命を描いてきたのに対し、近藤はその精神を受け継ぎながらも素材や技法を限定することなく、伝統的な染付に代わる現代に相応した造形を追究。常に変革を遂げ続けながら、研ぎ澄まされた感性と判断で、時代と対峙した制作活動を続けているアーティストです。緊張感のある幾何学的・抽象的な造形や金や銀・プラチナを陶に結晶させた「銀滴彩」の技法、「「白」の静寂」の世界など、次々と新しい領域を開拓。2002年には、スコットランドのエジンバラ国立芸術大学大学院に籍をおき、ガラスと陶を組み合わせるという表現方法を自らのものにしています。
これらの技術の探求により得た造形言語を駆使し、自然あるいはそれを内包する宇宙の森羅万象を現代に表現。常に新しい陶・造形世界を構築しようとする試みは陶芸界だけではなくFINE ARTの世界でも十分に評価されるべき活動であるとも言えるでしょう。
その活動は日本国内にとどまらず、1990年のブラジル・サンパウロ美術館を皮切りに、イギリス、アメリカなど世界各国の美術館から招聘を受け展覧会が開催されています。また、メトロポリタン美術館を始め世界各国の美術館に作品が収蔵されていることは、彼の理念と造形が単なる日本の陶芸と言う枠を超えた活動であると評価されていることの証左とも言えるでしょう。
本展では、近藤髙弘の伝統的染付作品から幾何学・抽象の染付作品(時空壺・次元陶筥)、また銀滴彩や新作のミストシリーズなど、初期から現在に至る活動の軌跡を一堂に展示するとともに、平面作品や写真、オイルシリーズなどもあわせて紹介。陶芸界のみならず、広く学術文化の領域でも注目されている表現活動の全貌に迫ります。