19世紀前半にヨーロッパで発明された写真は、日本には早くも幕末にもたらされました。これはまさしく西欧の科学技術との出会いであったわけで、苦心の末、日本人の手による撮影に成功した第一号が「島津斉彬像」(銀板写真)です。これは近代化を急ぐ鹿児島藩ならではの出来事でしたが、「写真術」は以降国内に普及していきました。
当館でも幕末・明治期の古写真やガラス原板を数万点所蔵しており、そのうち『旧江戸城写真帖』や『壬申検査関係写真』は国の重要文化財に指定されています。このように近年は、古い写真にたいする学術的価値が見直され、社会的な関心も高まってきています。まさに、それらは失われた記憶の記録であると同時に優れて芸術表現の手段でもあるからでしょう。
これまでその一部を三冊の目録として公開してきましたが、今回の特集では当館所蔵古写真を本格的に紹介するはじめとして、この目録に収載されたコレクションから博物館、博覧会、文化財、景観、交通、産業、修好使節、人物などのまとまりで紹介します