当記念館には山口家から提供を受けた山口蓬春(1893-1971)の作品や美術品が多数収蔵されていますが、その中には蓬春の手による模写も約50点含まれています。蓬春は、大正4年に東京美術学校西洋画科に入学しますが、日本画科に転じここで授業の一環として模写を制作しています。また師となる松岡映丘に出会い、卒業後は映丘が主宰する新興大和絵会の同人として、日本の伝統的なやまと絵の技法を学ぶこととなります。このように古典に接する機会が学生時代から数多くあり、当記念館に残されている模写からは、蓬春が伝統的な日本画技法を学びとろうと日々励んでいたことが窺えます。模写について蓬春は、著書『新日本画の技法』の中で「自分では、新しい素材を見つけたと思い込み、また新しい解釈をしたと思っても、実はそれは既に日本画の古典的な作品の中に、立派に取り上げられ解決されて居る場合が度々ある。そういう事では、単に狭い見解内での自己満足に過ぎない事になる。それでは、如何に技術の勉強をしても、ほんとうに新しい日本画を創造する事は出来ない事になる。だから、古典や伝統に関する勉強は、極めて重要である。」と述べています。古典研究に励んだ成果が、後の蓬春作品に生かされていったのです。
本展覧会では、当記念館が所蔵する貴重な蓬春の学生時代の模写などを展示するとともに、あわせて蓬春の本画及び蓬春コレクションより陶磁器などもご紹介いたします。
主な展示予定作品
1 山口蓬春 《燈籠大臣》 大正8-9年(1919-20)
2 山口蓬春模写 《模写「文正筆 鳴鶴図」双幅のうち》 原本・相国寺蔵(京都)、重文
3 山口蓬春模写 《小栗寛令模写「金淵呂子謙筆 椿ニ鶏」双幅のうち》 狩野家粉本
4 山口蓬春模写《「呂敬甫筆 草虫図」双幅のうち》原本・曼殊院蔵(京都)、重文
※都合により出品作品の一部を変更する場合があります。