イギリスの港町リバプールに暮らしていた4人の若者によるロックバンドは、1962年のデビューシングル〈Love Me Do(ラヴ・ミー・ドゥ)〉および1963年のセカンドシングル〈Please Please Me(プリーズ・プリーズ・ミー)〉のヒットにより、衝撃的な国内デビューを果たしました。折しもイギリスを始め世界の国々では第二次世界大戦の痛手から立ち直り、高度な経済発展に裏付けられた消費社会に推移するさなか、若者を中心に新しい文化が生まれつつありました。揃いのマッシュルームカットにタイトなスーツ、細いネクタイという「風変わりな」ファッションに身を包んだ彼らビートルズはその波の最先端に位置し、R&Bの影響を受けた激しい「ビート」と美しいメロディを武器に、旧弊で形式的な価値観に対して異議を唱えました。
ラジオやテレビの普及、アリーナでのライブ、ワールドツアー、そして人工衛星による初の世界同時生中継など、技術の発展を背景としたマスメディアの拡大とともにビートルズの名は世界中に知られるようになり、ひとり歩きする自らのイメージの巨大さにうんざりした彼らは、1966年のアメリカツアーを最後に、すべてのコンサート活動を停止しました。その後は自分たちの音楽を深く追求しようとレコーディングに専念し、サイケデリックカルチャーの担い手として、インド音楽や東洋思想からヒントを得た新しい音楽を創造していきました。それは当時誰も聴いたことがないほど新しく魅力的で力に満ち、それ以降生まれた数多くの音楽に影響を与え、人々の暮らしや価値観にも大きな変化を促しました。
本展覧会は、イギリスの日刊タブロイド紙「デイリー・ミラー」の倉庫に眠っていた、デビューから1970年に解散するまでのビートルズの活動を記録した貴重なアウトテイクフォト約150点を厳選し、ゴールドディスクやメンバー直筆のサイン、当時のキャラクターグッズなどとともに構成する写真展です。特に、今年は来日40周年にあたり、ビートルズが現代の社会や風俗に与えた影響力の強さを検証する絶好の機会と言えるでしょう。